ニッポンの風景に馴染むワゴンRの新型は、ハイテク装備と便利機能も搭載【クローズアップ前編】
2017/09/14
この車に乗るなら……という視点で人気車が持つ魅力に注目するカーセンサー(雑誌)の連載。今回はスズキ ワゴンRをクローズアップ!
▲1993年に軽ワゴンという市場を新たに築いたご長寿モデル。6代目にあたる現行型は今年2月に発売され、国内累計販売台数は約440万台(2017年2月時点)を誇る。広い室内空間や使い勝手の良さを踏襲しつつ、現行型には初めてマイルドハイブリッドを搭載し、JC08モード走行燃費33.4㎞/Lを達成。グレードにより3種類のフロントフェイスが用意されている悪目立ちしたくはないけれど、ただ凡庸では商売にならない
時々ワゴンRのデザイナーの立場を勝手に想像し、それはそれはプレッシャーなんじゃないかと心配になることがある。なぜならこのモデルほど全国津々浦々で見かける車は少ない。もはや街の風景の一部だ。それなら目立ちすぎてはいけない。かといって凡庸で無味乾燥なスタイリングでは売れない。軽自動車のため高価な素材を使えるわけでない。加えて規格によってサイズに制限があるわりに室内の広さも求められる。無理難題じゃないか。
だが今年登場した新型はすんなり街に溶け込み、どこを走っていても、どこに止まっていてもしっくりくる存在となった。試しに、買い物を終えた妻をピックアップする場面、駅に降り立った夫を駅に迎えにきた場面、「新車買ったの?」とご近所さんから声をかけられる場面を想定してみよう。いずれも典型的なニッポンの風景となっている。軽自動車のユーザーは車で自己主張したいわけではない。しかしなんでもいいわけではない。そんな曖昧なニーズに新型もしっかりと応えている。
▲他の多くのモデル同様、ワゴンRも2種類のフロントマスクが設定される。標準モデルとスティングレーがあるが、新型は標準モデルが最上級グレード(今回のテスト車のハイブリッドFZがそう)とそれ以外で微妙に顔つきが異なり、厳密には3種類の顔をもつようになった。軽自動車のこうした豊かな“顔芸”は、軽自動車のユーザー層が以前よりも広がり、老若男女どの層をも受け入れる懐の深さが求められるようになったことの表れだろう先進的ハイテク装備充実と知恵を使った便利機能の競演
規格によってサイズを決められている軽自動車は、モデルチェンジでスタイリングやパッケージングを一変させるのは難しい。それでもユーザーに定期的に買い替えてもらうには、ライバルと激しい販売競争を繰り広げている以上、価格を上げることに非常に慎重でなければならない。ほとんど無理ゲーといえる。それでも新型ワゴンRは今回も果敢に攻めた。
まず同車史上初めて「ハイブリッド」を名乗った。モーター機能付き発電機を高出力化し、リチウムイオンバッテリーを大容量化することで、クリープ領域に限ってではあるが、モーターのみの走行を可能とした。また単眼カメラとレーザーを組み合わせた衝突被害軽減システム、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ヘッドライトのオン/オフの自動切り替え機能など軽自動車としては充実した機能を採用した。先進的なデバイスばかりではない。リアドアには、濡れた傘を収納でき、水滴は車外に排水される傘立てを設置するなど、金ではなく知恵を使った数々の機能も盛り込まれている。長年売れてきたのには理由があるのだ。
▲センターメーターを採用し、シンプルな印象のインパネデザイン
▲運転席前方のダッシュボードに、ドライバーの視線移動を減らす効果のあるヘッドアップディスプレイが備わる。軽自動車としては初となる装備。車速、シフトポジション、クルーズコントロール設定などを表示できる
▲買い物袋用フックは軽自動車には必須アイテム。ワゴンRのインテリアには袋から飛び出したネギもよく似合う!?
▲リアシートを最も後ろまでスライドさせると後席空間はここまで広くなる! 膝前のスペースは大型車も真っ青。リクライニングもできる
【解説した人】塩見智
1972年、岡山県生まれ。自動車雑誌編集部を経てフリーランスライターへ。年を重ねるにつれ、派手でパワフルな車よりも実用的で経済的な車に関心を抱くように。
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