【名車への道】’07 フォルクスワーゲン トゥアレグ
2019/12/10

■これから価値が上がるネオクラシックカーの魅力に迫る【名車への道】
クラシックカーになる直前の80、90年代の車たちにも、これから価値が上がる車、クラシックカー予備軍は多数存在する。そんな車たちの登場背景、歴史的価値、製法や素材の素晴らしさを自動車テクノロジーライター・松本英雄さんと探っていく企画「名車への道」。

自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。
エンジン、シャシー共ともに二度と世に出ない内容だね
――さて、今月ですがフォルクスワーゲンから選びました。確か前に1990年代後半から一気に高級路線に進んだっておっしゃってましたよね?
――アウディに近づいた感じですよね?
当時としては最新のレーザーブレージングと超高張力鋼をふんだんに採用して強固なボディになっててね。まさに「骨格が良ければなんでもできる」ってな感じでそれは素晴らしい車になってたよ。
このプラットフォームを使って4WD、狭いバンクのV型4気筒を左右に2つ組み合わせたW8気筒エンジンを搭載したパサートW8(*1)ってのがあってね。高級サルーンの乗り心地なのにスポーツカーの運動性能で、本当に凄い車だったんだよ。好きだったな。
――じゃあ今日の車も絶対好きですね。トゥアレグのW12です!
――そうなんですよ。あ、こちらです。


――W12ってW8にさらに4気筒足したってことでいいんですか?
とてもコストのかかったエンジンとして当時のドイツの技術書にも掲載されていたぐらいなんだ。継続的にフォルクスワーゲンには搭載されないだろうと思ったけど、予想どおり短命だったね。だからこそ特別なんだ。
――そもそもW型が珍しいですもんね。

――限定車っていう扱いでしたっけ?
――もう少し詳しく教えてください!
ちなみにもっと速く感じたのは同じトゥアレグのV型10気筒のディーゼルターボ(*4)。180km/hからさらに加速したからね。日本では発売されなかったけど、それも凄いモデルだった。
でもW12の方がやっぱりラグジュアリーだったね。特にコンフォートモードは乗り心地はとても良かった。アウトバーンではオートモードで走ったけど、あの大きな車体と車高にも関わらず超高速域でフラつかないんだよ。
しかもターボと違ってアクセルを踏んだときのトルクの谷なんか皆無でさ。高級車に使われる素性の良いエンジンとはこういうものなんだよな。
――今回のトゥアレグW12は後期型だそうなんですよ。何か違うんですかね。


――本当に希少な車ですよね。
■注釈
*1 パサートW8
1996年から2011年まで作られた4世代目のパサートに用意されていたフラッグシップモデル。4L 275psのW8型エンジンを搭載。
*2 ベントレーとブガッティ
フォルクスワーゲングループの一員である2ブランド。ベントレーはW8やW12、ブガッティはV8を2つ繋いだW16エンジンを積んでいた。
*3 一時期はA8
アウディも2004年から2010年まで発売された2代目A8にW12エンジンを採用。6.0クワトロとして追加設定していた。
*4 V型10気筒のディーゼルターボ
ドイツで設定されていたディーゼルモデル。V10の他に直列の2.5LやV6の3Lなど、複数のTDIモデルが存在していた。
フォルクスワーゲン トゥアレグ(初代)
2003年から2011年まで発売された初代のトゥアレグ。ポルシェカイエンと共同で開発された兄弟モデルであり、コストパフォーマンスに優れたモデルとして人気を得た。エンジンバリエーションはV6、V8が用意され、2005年には世界限定500台でW12エンジン搭載モデルを発売。その規格外の仕様やスペックで話題を集めた。
※カーセンサーEDGE 2019年10月号(2019年8月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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