コロナ禍で自分と向き合い、思い切って手に入れた愛車。ボルボ 940エステート
2021/05/04
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?
コロナ禍で見つめ直した人生の目標
倉田さんがボルボ 940クラシックエステートを手に入れたのは昨年の5月のこと。1990年から98年にかけて生産されたモデルなので、すでに「クラシック」の領域にあるといえるが、倉田さんは一念発起して人生初の愛車として選んだ。
「コロナ禍によって先行きが不安定になったじゃないですか。自分もいつどうなるか分からないなって。そう思って購入に踏み切ったんです」
やりたいことはすぐにやっておかないと、きっと後悔することになる……。コロナ禍が、そんな心境の大きな変化をもたらした。
そして、かねてから倉田さんは死ぬまでに手に入れたいものが3つあった。ひとつは「家」、もうひとつが「奥さん」、そして「車」である。とくにマイカーの購入は、父親の影響もあって幼い頃からの念願だったのだ。
当初はボルボ 240エステートを検討していたが、クラシックボルボの王道モデルとして愛好家が多く、街で目にする機会もそれなりにあることから、プランを変更することに。往年のボルボらしさを存分に味わえ、そのうえ目にする機会が比較的少ないボルボ 940エステートに白羽の矢が立ったという。
もっとも、近年は940でもコンディションの良い個体はかなり高値で取引されている。そこで倉田さんは、中古車販売店で現状販売されていた940を探し出して格安でゲットした。各部はそれなりにくたびれていたが、赤やグリーン、ネイビーといった定番色ではない、白のボディカラーが決め手になったという。
機関部は車検取得時にある程度のお金をかけてしっかりメンテナンスしたことで、これまでこれといったトラブルは発生していない。部品に関してもリプロダクションパーツが豊富に用意されているため、いまのところ不安はないそうだ。
「ボディスタイルは角ばっていて古典的なのに、年式的にはそこまで古くないので現代の車と変わらない感覚で走れるのがいいですね。インタークーラーターボ付きの2.4Lエンジンはパワーだって十分です」
あくまで普段使いの「良き相棒」
自動車専門誌で大々的に取り上げられる新型車より、サーフィン雑誌の記事の片隅で、ライフスタイルを彩る小物として登場する車に魅かれることが多いと倉田さん。したがって、いまや珍しくなった940でも毎日磨いて眺めるような使い方はしない。
セカンドシートを畳むと現れる広大な荷室を生かし、趣味のサーフィンに出かけることに加え、仕事で使う建築資材を運ぶバンとしても実用している。普段の暮らしに欠かせない「良き相棒」なのである。
「僕は外装や内装が少しばかり傷んでもそれを『味』として許容できるタイプの車好きです。だから、できるだけノーマルを維持しつつ、枯れた雰囲気で乗り続けていきたいですね」
購入当初は維持していけるか不安があったものの、いざ所有してみると身の回りにポジティブな変化だけが起こったという。とくにプライベートな空間のまま移動できる面白さは、車を購入しなければ知ることができなかった世界だったと倉田さん。車が好きでありながら、経済的な不安から購入をちゅうちょしている同世代には、ぜひ勇気をもって一線を越えてほしいと力説する。
ラゲージにサーフボードを積み込んでポイントへ向かう道すがら、「俺ってちょっとイケてるかも」なんてうぬぼれてしまうことも正直ありますと倉田さんは笑った。
「実は、以前から付き合っていた女性と3ヵ月前に結婚したんです。あと残るのはガレージ付きの家だけですね(笑)」
30代前半にして早くも人生の「アガり」にリーチをかけた倉田さんであった。
倉田英明さんのマイカーレビュー
ボルボ 940エステート(初代)
●年式/1998年式
●グレード/クラシック
●購入金額/約47万円
●走行距離/168,000km
●マイカーの好きなところ/直線的なボディライン
●マイカーの愛すべきダメなところ/ときどきメーターのバックライトが点かないが、ダッシュボードを叩くと直るとこ
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/サーフィン・スノーボードなど横乗りスポーツをする人たち
ライター
佐藤旅宇
オートバイ専門誌『MOTO NAVI』 、自転車専門誌『BICYCLE NAVI』の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。様々なジャンルの広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はスズキ ジムニー(81年式)とスズキ グランドエスクードの他、バイク2台とたくさんの自転車。
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