ランボルギーニ レヴエルト▲ランボルギーニのフラッグシップとなる2シーターミッドシップスポーツ。V12NAエンジンに3基のモーターを組み合わせるPHEVに進化した

ランボ史上、最も“軽やか”なドライブフィール

ランボルギーニのフラッグシップV12モデルはカウンタック以降、ディアブロ、ムルシエラゴ、アヴェンタドールと、スタンツァーニレイアウトを踏襲することで、いわば“同類の進化”を遂げてきた。いずれの世代もたけだけしく、重々しく、乗りこなしたというためには気力はもちろん体力も必要なスーパーカーであった。

ところがどうだ。最新フラッグシップのレヴエルトの走りは、車検証上の車両重量が2トン近くあるというのに、ランボ史上、最も“軽やか”なドライブフィールをみせた。もちろん“重くて軽やか”な理由はパワートレインを筆頭とする電動化にこそあるわけで、全てが計算され尽くされた制御のおかげでもあろう。

これを革新と呼ばずなんという! 昔からのファンには寂しいことかもしれないが、ブランドは確実に大きくなった。世界の平均的なユーザー層は40歳代前後にまで若返っている。もはやカウンタックの乗り味など知らない世代ばかり、なのだ。
 

ランボルギーニ レヴエルト▲新設計のカーボンモノモック(Monofuselage)を採用。アヴェンタドールより10%軽量化されている
ランボルギーニ レヴエルト▲12.3インチのドライバーモニターと8.4インチのセンターディスプレイに加え、9.1インチのパッセンジャーディスプレイを装着する

シザードアを開けて乗り込む。第一印象は“ルーミー”。タイト感はない。だから緊張感もさほどない。着座位置はかなり低い。地面をはっきり近くに感じる。シートベルトをかけ静々とバッテリー駆動で走り出した途端、身体と車体とが目に見えぬコードでつながったような気分になった。

チッタモードの電動走行はフロント2モーターのeアクスルによる前輪駆動である。違和感はまるでない。おそらくレイアウト=重量配分と制御のおかげだろう。それよりも街中で静粛走行はやはり嬉しい。早朝に家を出発するような際も、もう心の中でご近所さんたちに謝らなくてもいいのだ。

交通量の多い幹線道路に入ってからドライブモードをストラーダに。そこまでがあまりに静かだったせいか、新開発V12エンジンの走りながらの目覚めは劇的だ。暖機運転も走りながら、である。

驚くのは乗り心地。先代にあたるアヴェンタドールも後期型ともなれば磁性流体ダンパーを採用できたこともあって、初期型のように突っ張ったライドフィールは幾分弱まった。それでもウラカンあたりに比べたら、そもそも硬質なライドフィールが特質だったのだ。プッシュロッド式のサスペンション構造によるところも大きい。

前後をeアクスル化(しかもフロントはテメラリオと共有)するにあたって、レヴエルトではコンベンショナルな仕立てのマルチリンクサスペンションを採用している。さらにより軽量で高剛性のボディ骨格、バッテリーの最適配置なども功を奏して、その乗り心地はウラカン EVOよりもよい。

ステアリングの軽やかな動きは特筆ものだ。交差点では片手でスイスイ曲がっていける。車重はもちろん、ボディサイズも気にならない。街中ではとても寛容で実用的な車だ。

実は、街中ではエンジンの出番など(暖機運転以外に)まずないと言っていい。せっかくの新開発V12を試したいと思えば、まずは高速道路を目指した方が良さそう。
 

ランボルギーニ レヴエルト▲新設計の6.5L V12NAエンジンは縦置きに配置。8速DCTが組み合わせられた

速く走らせるコツは車を信じることだけ

ストラーダモードのまま料金所を通過し、路面が安定したところを見計らって、アクセルペダルを踏み込んだ。もちろんフルスロットルではない。かかっていたエンジンのご機嫌伺いとばかり、少し踏み込んだだけだったのだが……。

電気モーターに助けられた低回転域からの圧倒的なトルクフィールに驚くまもなく、エンジンのNAフィールをこれから楽しもうと思った矢先、車体はとんでもない速度域に達しようとしていた。ストラーダモードゆえサウンドにもメリハリがなく、速度感をなくしてしまっていたのだった。逆に言うと、それほどこの新しいボディ&シャシーはよくできている。

スポルトモードも試してみる。エンジンのキャラが獰猛に変わったことはサウンドの変化でわかるが、扱いづらそうな印象は皆無だ。獰猛になのに従順。レヴエルト全般についても同じことが言えると思う。この明らかな矛盾、洗練と野蛮が仲良く同居するかのようなパフォーマンスこそランボルギーニの新時代、なのかもしれない。

ワインディングロードに向かおう。もちろんスポルトモード。V12の咆哮が山間に響いている。コーナリングスピードが恐ろしく速い。速度を上げれば上げるほどにノーズは内を向き、車が喜んで曲がっていく。ドライバーの技量はそこそこで良い。むしろ車を徹底的に信じるという勇気が速く走らせるために必要だ。

誰も車重が2トンもあるとは思わないだろう。アヴェンタドールより確実に軽快に走ってくれるのだから。そしてワインディングロードをけっこうな速度で攻め込んでみても汗一つかかなかった。
 

ランボルギーニ レヴエルト▲2基のモーターでフロントを駆動、最高出力825ps/最大トルク725N・mを発生するV12と1基のモーターでリアを駆動させる4WDで、システム最高出力1015psを発生する。センタートンネルには3.8kWhのリチウムイオンバッテリーを配置
ランボルギーニ レヴエルト▲六角形のマフラーやY字型のテールランプを採用。3段階に調整可能なリアウイングも装着されている
ランボルギーニ レヴエルト▲専用開発のブリヂストン「ポテンザ スポーツ」を装着。フロント20インチ/リア21インチの前後異サイズとなる
ランボルギーニ レヴエルト▲アヴェンタドールより頭上スペースが26mm高く、足元スペースが84mm広くなっている。シート後方にはゴルフバックサイズの荷物も収納可能
文/西川淳 写真/タナカヒデヒロ

自動車評論家

西川淳

大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。

先代となるランボルギーニ アヴェンタドールの中古車市場は?

ランボルギーニ アヴェンタドール

ランボルギーニの本流となるV12自然吸気エンジンをミッドシップに搭載するフラッグシップ。カウンタック、ディアブロ、ムルシエラゴの後を継ぎ、2011年に登場した。カーボンモノコックボディや6.5L V12エンジンなど、すべてが新しくなっている。

2024年12月上旬時点で、中古車市場には90台程度が流通。支払総額の価格帯は3100万~9800万円となる。さらなるハイパフォーマンスモデルのSVが10台程度、SVJも15台程度が流通している。また、最終仕様のウルティメ(写真)は5台程度探すことができる。
 

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ランボルギーニ アヴェンタドール× 全国
文/編集部、写真/アウトモビリ・ランボルギーニ