【海外試乗】新型 フェラーリ 12チリンドリ|スーパースポーツの概念を覆すほどしなやかで快適! エレガントなスタイルのベルリネッタ
カテゴリー: フェラーリの試乗レポート
2024/10/11
▲1950~1960年代の伝説的グランドツアラーからインスピレーションを得たというデザインをまとい、フロントミッドにV12自然吸気エンジンを搭載したフラッグシップ。ソフトトップを備えたスパイダーもラインナップするグランドツーリングとピュアスポーツを高次元で両立
フェラーリ 12チリンドリ(「ドーディチ・チリンドリ」と発音)にルクセンブルクで試乗した。
排気量6.5LのV12自然吸気エンジンをフロントミッドシップした12チリンドリは、812スーパーファストの後継モデルとされる。だとすれば、パフォーマンスの点でもプレステージ性の点でも、フェラーリ・ロードカーの頂点に君臨するカタログモデルと捉えるのが、これまでの常識というもの。なにしろ、1947年にデビューしたフェラーリの名を冠した初のモデル「125S」にもV12自然吸気エンジンが搭載されていたほど、フェラーリとV12は切っても切れない関係にあるのだ。
そもそも、排ガス規制が厳しさを増す一方の現代に、V12自然吸気エンジンが生き長らえていること自体が奇跡に近い。ちなみに、過給器もハイブリッドも備えないV12エンジン搭載モデルを現在もラインナップしている自動車メーカーはフェラーリだけである。
しかし、ルクセンブルクで試乗した12チリンドリは、812スーパーファストとは明らかにキャラクターが異なっているように思えたのである。
▲デルタウイングシェイプと呼ばれる、ルーフの一部をブラックとした個性的なリアデザインを採用
▲運転席と助手席が個々のモジュールで構成され、ほぼ左右対称のデザインとなるまず、そのスタイリングが812スーパーファストとは大きく異なる。
ハイパフォーマンスモデルであることがひと目でわかる812スーパーファストに比べると、1968年デビューの365GTB/4ベルリネッタにインスパイアされた12チリンドリのデザインは、ロングノーズ・ショートデッキの基本プロポーションこそ812スーパーファストと共通だが、そのエレガントで気品溢れるラインはまったくの別物といって構わない。また、デルタ・コンセプトと呼ばれる未来的なグラフィックを採用した点も、812スーパーファストとは大きく異なっている。
▲トランクリッドにはアクティブエアロを装備。アンダーボディも効率的にダウンフォースを発生するようにデザインしてされている走り始めてからの印象も、812スーパーファストとは明確に異なっていた。
強固なボディが足回りからの衝撃を余すところなく受け止める812スーパーファストの乗り味は、そのダイナミックなハンドリング性能を考えれば極めて洗練されていて快適といって差し支えない。まるでバイオリンのように純粋で美しい響きのエグゾーストサウンドにしても、800psという途方もない最高出力のことを思えば、決して不当にうるさいとはいえなかった。
しかし、12チリンドリは、快適性の点でも静粛性の点でも812スーパーファストを格段に上回っている。
その乗り心地は、もはやスーパースポーツカーの概念を覆すほどしなやかで快適。仮に812スーパーファストが「ソリッドな足回りの感触を強固なボディでカバー」していたとすれば、12チリンドリはそもそも足回りから硬さが感じられないと表現したくなるほど。それでいてボディの剛性感は相変わらずなのだから、快適性は大幅に向上したというべきだろう。
しかも、ボディの姿勢変化は的確にコントロールされていて、機敏なハンドリングを一切、邪魔していない。そのことは、ルクセンブルク内のグッドイヤー・プルービンググランドで限界的な走行を試した際にも、明確に感じ取ることができた。このダイナミクスと快適性を両立させたフェラーリのシャシー・テクノロジーには目を見張るべきものがある。
同様のことはエンジンについてもいえる。V12エンジンが発する音量は、812スーパーファストよりもはっきりと小さい。それでも物足りなさを感じないのは、812スーパーファストよりもわずかに中音域を厚めの設定とした恩恵だろう。つまり、ここでもダイナミクスさと快適性が両立されているのだ。
▲最高出力830ps/最大トルク678N・mを発揮する6.5L V12自然吸気エンジンを搭載。0→100km/h加速2.9秒、最高速度340km/hとなる今年4月にマラネロで行われた12チリンドリのスネーク・プレビューにおいて、フェラーリでチーフ・マーケティング&コマーシャル・オフィサーを務めるエンリコ・ガリエラは、12チリンドリについて「GTとピュアスポーツのちょうど中間に位置するモデル」と説明しながらも「両方の要素を採り入れた妥協の産物ではなく、GT性とピュアスポーツ性を高い次元でバランスさせたモデル」と説明していたが、まさにそのとおり。
その意味において、12チリンドリは「ピュアスポーツでありながら快適性にも配慮した812スーパーファスト」とは一線を画したモデルといって差し支えないだろう。
▲ボンネットとフロントフェンダーを一体化したスタイルを採用。ちなみに、ボンネットは「エンジンベイの眺めを堪能できるよう」にとフロントヒンジが採用されている
▲前後重量配分はフロント48.4%、リア51.6%。四輪独立操舵(4WS)も備える
▲メーターディスプレイをはじめ3つのディスプレイで構成されるHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)を新たに導入
▲リサイクルポリエステルを65%用いたアルカンターラを採用するなど、最新モデルらしくサステナブルにも注力されている先代モデルとなるフェラーリ 812スーパーファストの中古車市場は?

最高出力800psの6.5L V12自然吸気エンジンをフロントミッドに搭載した“フェラーリの本流”モデル。デザインは社内のスタイリングセンターが担当している。プラットフォームは共通ながら、ほとんどのパーツを一新しエアロダイナミクスなどを飛躍的に向上させた。リトラクタブルハードトップを備えたオープントップの812GTSもラインナップしている。
2024年9月下旬時点で、中古車市場には20台程度が流通。支払総額の価格帯は4200万~5600万円となる。オープンの812GTSは25台程度が流通している。
▼検索条件
フェラーリ 812スーパーファスト× 全国▼検索条件
フェラーリ 812GTS× 全国【関連リンク】
あわせて読みたい
M・ベンツのセダン狙いのあなたに推したい“粋な別解”4ドアクーペ CLSクラス。新車で1000万円超えが今中古車なら総額300万円台! オススメの選び方は?
メルセデスの名車に乗る|W201型からSLS AMGへ。“ネオクラとAMG覚醒”をいま読み解く【カーセンサーEDGE 2026年1月号】
優先すべきはヘリテージか 経済効率? マセラティのモデナ回帰にみるブランドの価値とは【スーパーカーにまつわる不思議を考える】
R32型 スカイラインGT-Rが50万円から? あの時買っときゃ良かった……のモデルを振り返り“後悔を楽しむ”
“いまは”日本未導入のGAC(広州汽車集団)AION Y Plusに試乗してきた!
プロショップで聞いた600万円前後で狙える初代 ポルシェ マカンのリアル! 狙うは前期型の高性能グレードか? それとも後期型のベーシックグレードか?
トヨタ センチュリーがブランド化! クーペタイプも公開された今、改めて歴代モデルを振り返ってみよう!
「大人になったら絶対にこの車に乗ろう!」と子供の頃の夢を叶えた86(初代)
600万円台で買えるアストンマーティンはアリか? プロフェッショナルに聞いてきた真実!
「20年後も残る車、消える車」とは? 創刊20年を機に真剣に考えてみた【カーセンサーEDGE 2025年12月号】









