オートバイ乗りのガレージハウス
カテゴリー: カーライフ
タグ: EDGEが効いている / ガレージハウス
2015/11/24

“住居付きガレージ”が松永作品のキーワード
久しぶりに、松永基さんデザインのお宅を訪れた。自他ともに認めるカーガイである松永さんだけに、これまで拝見してきたガレージハウスは、いずれも車やオートバイ用のスペースが最優先されていた。必然的に、愛車たちの存在が美しく際立つという、車好きならずとも憧れるものばかりであった。
お邪魔したY邸は、横浜市内の小高い丘の上に建っていた。見晴らしのよい好立地で、リビングルームから見下ろす新緑を湛えた風景や、吹き抜ける初夏の風がとても心地よいという。じつは、最寄り駅からは少々離れており、バスなどの公共交通機関の便もけっして良好ではないのだが、それもYさんのように日常の移動手段は車かオートバイのみ! という方にとってはネガティブな要素とはならないようだ。
外観は、黒いガルバリウムの壁面をもちクールな印象。玄関の扉と、そのすぐ脇にあるガレージ用の扉にはウッディな素材が用いられ、アクセントとなっている。庭側の壁面にも格子状のスライドドアが設けられていて、開放すると広くガレージ内を見ることができる。この格子状のスライドドアは、松永さんの作品に多く見られるアイテム。半透明のガラスを通した自然光が独特の光彩を放ち、ガレージ内の雰囲気にひと味エッセンスを加えてくれる。
そんなガレージには、20年以上所有しているというマツダ ロードスター、カタナ、ドゥカティ、ビューエルが整然と並んでいる。現在はオートバイがメインでロードスターに乗る機会は少ないというYさんだが、ロードスターをぐるりと観察するといたるところコンペティティブな雰囲気漂い、そうとう走り込んできたことが窺える。これまでもアウトビアンキY10をはじめフェアレディZ(Z31)、RX-7(FC)など、いわゆる「走り屋」好みの車をセレクトしてきたようだ。
「主にオートバイを中心としたガレージハウスにしたかった」とYさんがおっしゃるとおり、オートバイ3モデルはどれも通好み。それぞれ独特のオーラを放ち、並んでいるだけでも実に絵になる。
ガレージそのものは、大型車でも楽に2台は格納できるスペースがあるため、現在の保有車両ならば十分以上の空間だ。そこにメンテナンス用品や、車やオートバイ関連の雑誌・書籍が並ぶ棚が設けられている。
そのほか1階は、バスやトイレ、洗面所といった生活スペースも備えているが、それらは玄関を入った突き当たりの一角に集中している。そこまでの動線とガレージとはガラス窓で仕切られていて、玄関から2階へ、または2階からバスルームへと移動する際には、つねにガレージが眺められるような作りとした。
実際にこのガレージハウスに住んでみて、Yさんはどのような感想をおもちだろう。
「車やオートバイを屋内に保管するというガレージ本来の役割はもちろんですが、気がついた所をすぐに修理やメンテナンスができるという点が、いちばんうれしいです。さらに、その作業がタイムリミットになっても、そのままの状態で中断できるということも利点だと思います。そうそう、雨の日のオートバイでの通勤時には、濡れたままガレージに入り、レインウエアをすぐに乾かすことができます。これらのことが、ガレージハウスならではのメリットですね」。
すっかりガレージライフに浸り、Yさんはご満悦の様子だ。
ガレージの空気感を共有する、大型のロフトを設置
さらにこのY邸には、松永さんの遊び心が反映された設えがある。“ガレージロフト”と呼ばれるスペースで、玄関から2階にアクセスする途中の“1階のロフト部分”にあたる空間だ。ロフトといっても、身長180cmのリポーターでも屈むことなく歩けるほどの高さを確保。愛車たちを俯瞰で眺められることはもちろん、ガレージと同じ空間なので、臭いや気配なども味わいながら過ごせることが特徴だ。
ロフトは2階にも設けられていているから、Y邸は2階建てでありながら4つのフロアが絡み合って構築されていることになる。それぞれのフロアへのアクセスはウッディな階段で結ばれているが、その手すりは真紅に彩られ目を引くワンポイントとなっている。これも、イタリア車をこよなく愛する松永さんの遊び心から生まれたものに違いない。
「愛車をいじれるガレージとして、メンテナンスの作業性を高めたいと考えています。作業台も欲しいし、工具ももっと増やしていきたい。コンプレッサーも静音タイプにしたいし……。あれこれ考え出すと、思いは尽きないですね」
そんな今後の進化についても、松永さんなら我がことのように相談に乗ってくれるはずだ。







【オートバイ乗りのガレージハウス】
■事前に具体的なイメージを持っておらず、ヒントを探るために、ヒアリングには十分に時間をかけて設計。肝心のガレージに関しては、クルマやオートバイを置くスペース、作業や収納をするスペースを床の塗装で区分けするなど工夫をしている。配色も作業性を考慮したカラーにした。注目は“ガレージロフト”。将来的には仕事場として活用できるように、ゆとりを持ったスペースにしていることが特徴
■主要用途:専用住宅
■構造:木造
■敷地面積:211.66平米
■建築面積:70.80平米
■延床面積:123.80平米
■設計・監理:エムズワークス 一級建築士事務所 松永 基
■TEL:0120-321-549
■施工:アイ・ディー・エム
【関連URL】
※カーセンサーEDGE 2015年8月号(2015年6月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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