ボルボは、なぜ100年「安全」を語り続けるのかーES90・EX90に見る、人を守る哲学とOKISHUとの共通点
2026/08/21
▲7月に開催された、「子どもの車内安全」に関するメディア向けセミナー。カーライフエッセイスト吉田由美さん(左)、ロッタ・ヤコブソン博士(右)
カーセンサー編集長 中村由美さん、今回はボルボのフラッグシップEV「ES90」と『EX90』の日本発表イベントに行ってきたそうですね! やっぱり最新EV、デザインや急速充電、高性能プロセッサみたいなデジタル性能に圧倒されました?

カーライフエッセイスト 吉田由美さんもちろん最新のテクノロジーもすごかったですよ! 加えて、今回、同時に来日された、ボルボの安全研究の第一人者であるロッタ・ヤコブソン博士のお話を聞いて、改めてボルボの「命を守る技術」への圧倒的な覚悟を感じました。

カーセンサー編集長 中村おお、さすが「安全のボルボ」ですね。でもなんだか、由美さんがずっと推し進めている交通安全プロジェクト「OKISHU(オキシュー)」の考え方にも通じるものがありそうな話ですね?

カーライフエッセイスト 吉田由美さんそうなんです! まさにピッタリ重なる部分があって。OKISHUも「安全は運転席に座る前から始まっている」という人に寄り添う姿勢を大切にしていますが、ボルボの安全思想に触れて、その重要性を再確認しました。ぜひ詳しくお話しさせてください!
人を思う、100年の哲学
▲2026年7月に発表されたボルボ EX90は3列シート7人乗り大型電動SUV。ファミリーユースや長距離ドライブにもぴったり「ボルボ」と聞くと、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは“安全”ではないでしょうか。
もちろん、デザインも北欧らしく機能的で美しいですし、電動化への取り組みも世界をリードしていますが、今回、新たに登場したボルボのフラッグシップEV「ES90」とSUVタイプの「EX90」の日本発表に合わせて来日したボルボの安全技術を代表する世界的な研究者の一人、ロッタ・ヤコブソン博士が「ボルボの安全」について説明してくださいました。
ヤコブソン博士は、ボルボ・カーズ・セーフティセンターのシニア・テクニカル・スペシャリスト。1989年にボルボに入社して以来、30年以上にわたり乗員保護の研究を続け、むち打ち障害保護システム「WHIPS」や子どもの安全技術など、ボルボを代表する数々の安全技術に携わってきました。ロッタ博士が「安全」に興味を持ったのが大学時代。「エンジニアのための機械工学的な知識を人のために使いたい」と思ったからだそう。
今回、私がセミナーから改めて感じたのは、ボルボが100年もの間貫いてきた「人を守る」という揺るぎない哲学でした。

最近のクルマは、スペック競争になりがちですが、ボルボは少し違います。彼らが最初に考えるのは、「人はミスする」ということ。だからこそ、そのミスをクルマがどう補い、どう命を守るかを徹底的に考えています。
この考え方に、私もいたく共感します! 私が取り組んでいる交通安全応援プロジェクト「OKISHU(置きシュー)」も、「安全は運転席に座る前から始まっている」と思っています。運転しやすい靴で運転することが事故防止につながるという、ごく当たり前のことですが、意外と見落とされがちな視点を伝えています。OKISHUもボルボも、人に寄り添う安全思想という意味では、共通しているように感じますが、私たちはドライバーに対して、「気をつけましょう」という呼びかけを行なっているのに対し、ボルボは加えて自動車メーカーとして、「失敗しても命を守る」という覚悟を強く感じました。
▲由美さんとまるも亜希子さんのユニット「OKISHU(オキシュー)」は、「置きシューズ(車内に運転用の靴を置いておく)」という、ちょっとした習慣から安全運転を広めようとスタートした活動。「置きシュー子」がデザインされた「置きシューズ」用のバッグや子ども向け交通安全冊子など、草の根活動を伝えるさまざまなグッズも制作「サークル・オブ・ライフ」が生んだ数々の発明
その象徴とも言えるのが、1959年にボルボが開発した3点式シートベルト。 今では世界中で当たり前に最も安全なシステムとしてクルマには標準装備されていますが、当時は画期的な発明でした。肩と骨盤という人体の強くて硬い部分で体を支え、片手で簡単に装着できるシートベルトは、これまで多くの命を救ってきました。そして素晴らしいのは、ボルボはこの特許を独占せず、世界中のメーカーが使えるように公開したこと。「安全は競争ではなく、人類全体の財産である」。そんなメッセージが、この一本のベルトには込められているのです。

さらに興味深いのは、ボルボの安全技術は、机上の理論で生まれているわけではないということ。1970年代から、ボルボ本社のあるスウェーデン・ヨーテポリ周辺で事故が起きると、専門チームが現場に向かい、事故原因や車両の損傷、乗員の状況などを徹底的に調査。そのデータは8万件以上に及び、それを新しいクルマづくりに反映し、さらに実車テストやシミュレーションで検証する。。。この循環を「サークル・オブ・ライフ」と呼び、安全技術を磨き続けています。世界初となる側面衝突保護システム「SIPS」、サイドエアバッグ、インフレータブルカーテンエアバッグなど多くの革新的な技術は、これらにより誕生しました。事故が起きてから考えるのではなく、事故から学び、次の事故を防ぐ。その積み重ねこそがボルボの強さなのです。
科学的根拠に基づいた「子どもの安全」

▲後ろ向き設置可能なチャイルドシート(左)と、ブースターシート(ジュニアシート)(右)そしてもうひとつ。特に印象的なのは子どもへの安全の考え方です。
子どもの車内での安全を守るチャイルドシートは、現在では多くのメーカーが手がけ、子どもの安全に貢献していますが、日本では2025年時点で6歳未満の使用は82.4%(警視庁・JAF調査)。時折、子どもの車外放出による死亡事故も目にします。チャイルドシートは、正しい使い方はもちろん、適切な形状やサイズなどの製品選びとともに、装着の仕方も重要です。
日本ではチャイルドシートは前向きというイメージがありますが、ボルボでは少なくとも4歳ごろまでは「後ろ向き」に装着することを推奨しています。 そしてその理由を聞けば納得です。
小さな子どもは首の筋肉も、骨もまだ十分に発達していません。正面衝突では頭の重さが首に集中してしまいますが、後ろ向きなら頭から背中全体で衝撃を受け止めることができます。これは、宇宙飛行士がロケットの打ち上げの際に、仰向けで座るのと同じ考えだそうです。 なるほど~! そう聞くと「後ろ向き」の意味がよくわかります。しかもこれは感覚ではなく、科学的な裏付けに基づいているのです。 さらに子どもが大きくなってからも、すぐに大人用シートベルトを使うのではなく、ブースターシート()で骨盤の位置にベルトを正しく通すことを推奨しています。身長150cm、10歳ごろがひとつの目安という説明も、とても実践的です。
「人はミスをする」からこそテクノロジーで補う

そして、安全への挑戦はこれだけでは終わりません。
ES90やEX90には、車内に取り残された子どもやペットを高精度レーダーで検知する置き去り防止システムを採用しています。 呼吸によるわずかな動きまで感知し、乗員が乗っていればドアをロックしない。さらにEVの特性を活かして、バッテリーがあるかぎり換気を続け、車内温度の上昇を抑える仕組みまで備えています。ここでも根底にあるのは「人はミスをする」という考え方です。
どんなに子どもを愛している親でも、疲労やストレス、生活環境の変化などが重なれば思いもよらない「うっかり」が起こることがあります。
その昔、「ミスタープロ野球」として愛された伝説の選手は、息子さんが3~4歳の頃、球場に置き去りにして帰宅してしまったエピソードが有名ですが、その日、ミスターは、自分の試合内容に不満を感じ「一刻も早く自宅で素振りをしたい」と考えていて息子さんの存在を忘れていたそう。
この話は、あまりに野球に集中する彼の「ミスター伝説」として温かく語られていますが、そんな起こりうる万が一の現実から目を背けず、テクノロジーで命を守ろうとする姿勢には胸を打たれました。
最新EVの進化の本質にあるもの
▲2026年7月に発表されたボルボ ES90は4ドア フラッグシップ電動セダン。流麗なデザインES90とEX90は同じ新世代プラットフォーム「SPA2」を共有し、800Vの電気アーキテクチャーを採用し、超高速充電やNVIDIAの高性能プロセッサ「DRIVE AGX Orion」を搭載したコアコンピューターがクルマ全体を一元管理するソフトウエアが中心の新世代EVとして注目されていますが、その進化の本質は「速く充電できること」でも、「高性能であること」でもありません。実は、人を守るためのテクノロジーなのです。
ボルボは来年で100周年を迎えますが、100年変わらない思想こそが、ボルボというブランドの最大の魅力ではないでしょうか。
私はさまざまなメーカーの車に触れて、試乗していますが、ボルボに乗るたびに感じるのは「最新技術を見せたい」のではなく、根底にある「悲しい事故を一件でも減らしたい」という強い意志です。
そしてそれは「OKISHU」が伝え続けている「安全は運転する前から始まる」というメッセージとも重なります。
これからの時代、車選びの基準はデザインや性能だけではありません。 「どれだけ人を思い、どれだけ命を守ろうとしているか」 そんな視点でES90やEX90をはじめ、ボルボ車を見ると、ボルボが築いてきた100年の歴史がこれまで以上に深く、そして温かく感じられるはずです。
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