ロープレコンテスト

「いらっしゃいませ」から始まる中古車販売店での商談。そこには、商品知識だけでなく、相手の気持ちに寄り添い、不安を解消し、最終的には「この人から買いたい」あるいは「この人に売りたい」と思ってもらうための、さまざまなスキルが求められる。

9月16日、「ネクステージ幕張/ジャガー・ランドローバー幕張」で、そんな中古車販売・買取の接客力を競うロールプレイング大会「U-CAR MASTERS CUP~信頼と誇り~」が開催された。

昨年12月に続く2回目の開催で、今回は一般社団法人日本自動車流通研究所(JADRI)が主催した。
・IDOM
・インディオ富山
・オートバックス・スクエアカーズ
・カーセブンデジフィールド
・カレント自動車
・シティライト
・ネクステージ
・ユーポス
・リバティ
の中古車関連9社から、販売部門9名、買取部門7名の計16名の代表「選手」が出場。会場には見学者やメディアなど約160名の関係者が集まった。

ロープレコンテスト▲独特の緊張感の中でロールプレイング(模擬営業)が行われる

競技時間は販売部門が40分、買取部門が50分。実際の商談を想定した接客を行い、「信頼」をテーマに審査される。

今回からは、顧客にとって不利益となる情報まで適切に伝えているか、法令やガイドラインに沿った説明ができているかといった点も審査項目に加わった。競技は両部門とも2レーンで同時に進行。各レーンには自動車業界に精通した識者4名が審査員として配置され、計16名が多角的な視点から選手の接客を評価する。

ロープレコンテスト

前大会から見学ルールも大きく変わっている。他社・他部門の商談見学に加え、選手同士の名刺交換も新たに解禁されたのだ。

引き抜きなどのリスクを考えられる中で、あえて解禁に踏み切ったのは、普段は見ることのできない他社の接客に触れ、互いの工夫や技術から新たな気づきを得てもらうためだという。そこで生まれた優れた接客事例を業界内で共有し、一企業だけでなく中古車業界全体の接客品質向上につなげる狙いだ。

昨年より多い見学者、会場を包む独特の緊張感

ロープレコンテスト

会場に入ってまず感じたのは、昨年より明らかに人が多いこと。商談スペースでは選手と顧客役が向き合い、その周囲を審査員や見学者が取り囲み、真剣にメモを取る見学者の姿もある。

普段の商談を大勢が凝視することはない。しかも観衆の多くが同業者となれば、自然と空気は張り詰める。

ロープレコンテスト

出場選手たちは、話術や物腰だけでなく、姿勢や身だしなみ、車の触れ方にまで気を配る。もちろん基本的な礼儀作法は共通するが、その一方で、同じ「信頼」というゴールに向かっていても、所属する企業の考え方や選手の個性によってアプローチが異なるところが、この大会の面白さでもある。

「元気の良さも信頼につながる」ネクステージ白濱氏

ロープレコンテスト▲「いらっしゃいませ」の第一声から明るさが表れていた

販売部門を制したのは、ネクステージの白濱亘氏。ネクステージの代表は、昨年大会に続く優勝となった。

――全国約3600名の販売・買取スタッフから代表として選ばれたとか?

白濱氏「ブロック長からの推薦と面接など、厳しい社内予選を経て出場できました。自分自身、こういう場に出たいという思いが強かったので、うれしかったですね」

――普段の商談で、とくに大切にしていることは?

白濱氏「やっぱり、お客様の立場に立つことです。もし自分がお客さまだったら、どういう提案がいいのか、どんな条件がいいのかを常に考えています。あとは元気な接客ですね。自信を持って提案していることが伝わるように、元気の良さを意識しています」

ロープレコンテスト▲審査員からも圧倒的な自信と安心感があると絶賛されていた

――実演を終えてみてどうでしたか?

白濱氏「普段どおりの接客はできたかなと思います。ただ、時間制限があるなかでやり切るのは難しかったですね。もっと深く掘り下げたかった部分もありました」

――実演では車両の装備や機能についても豊富な知識を披露していましたね。

白濱氏「日頃から、なるべく実車に触れて機能を把握するようにしています。あとは自分が好きな車以外にも積極的に興味を持つようにしています」

白濱氏は、祖父と両親が自動車関係の店を営み、兄は整備士。車に囲まれた環境で育ち、スーパーカーが大好きな少年だったという。顧客とのコミュニケーションがとても「アツく」感じられたのは、そうした環境とはきっと無縁ではないだろう。

審査員からは「堂々としており、説明も非常に分かりやすく、接客レベルが全体的に非常に高い」と絶賛されていた。

カーセブン櫻井氏「まずは警戒心を解いてもらう」

ロープレコンテスト▲お客さまに寄り添った接客を行う櫻井氏

買取部門のトップバッターを務めたのが、カーセブンの櫻井雅俊氏。社内40~50人ほどが参加する予選を勝ち抜いての初出場で、見事3位に入賞した。

――初出場でトップバッター。かなり緊張したのでは?

櫻井氏「そうですね(笑)。でも、普段からロープレはやっていますし、お客様の不安な部分をできるだけ取り除けるように、話す内容を意識して準備しました」

――普段の商談で、とくに大切にしていることは?

櫻井氏「初対面のお客さまには、まず悪いイメージや警戒心を解いていただくことですね。笑顔になっていただくことも大切です。自分が硬くなると、お客さまも硬くなってしまうので」

ロープレコンテスト▲査定時の振る舞いや接客も評価される

――お客さまに「売ってもらう」ために意識されていることは?

櫻井氏「自分の意見を押し付けないことです。現場では『買い取る』ことがゴールですが、最短ルートを目指さない。まずはお客さまの話を聞いて、納得していただけるように説明することを心がけています」

ちなみに、これまでに印象に残っている商談を聞いたところ、「夢で車を売却する夢を見たから、査定してみようかなと思った」というお客様が来店し、商談をまとめたことだとか。

実車確認の際、車の扱いも非常に丁寧だった櫻井氏。審査員からも「この人なら愛車を任せても安心できる」と感じさせる接客だったと評価された。

「人との距離の縮め方が武器」ユーポス我妻氏

ロープレコンテスト▲終始穏やかで安定した接客の我妻氏

買取部門で1位となったのは、ユーポスの我妻由加吏氏。前職はガソリンスタンド勤務で、ユーポスでは新店舗のオープンとともに店長に就任。ユーポスでの業界経験は、まだ1年余りだが、社内のロールプレイング大会で1位を獲得し、代表として出場した。

――普段の商談で、とくに大切にしていることは?

我妻氏「『売りたい』『買いたい』という営業的な目線はもちろん大切ですが、同時にお客さまの目線も常に持ち続けたいと思っています。また、車に詳しくない人にも伝わるよう、自分の経験談を交えながら、できるだけ共感しやすい会話を心がけています。ガソリンスタンド時代は短時間の接客が中心でしたが、買取店では40分から1時間ほどかけて商談します。そうした中で『いかにお客さまとの距離を縮め、心を開いてもらうか』が大切だと感じています」

――接客力を磨くために、普段から意識していることは?

我妻氏「毎日が勉強だと思っています。コンビニやスーパーに行ったときも、自分がお客さまとして接客されたときに、良かったこと、嫌だったことを考えて、自分の接客と照らし合わせています」

ロープレコンテスト▲「自分の愛車を預けてもいいな」と思わせる安心感がある我妻氏の接客

――実演を終えてみてどうでしたか?

我妻氏「皆さん、それぞれに『カラー』があるのだと思いました。これまで他の方の接客を見る機会がなかったので、自分の接客を客観的に見直すうえでも、とても勉強になりました。すごくハイレベルな大会で、多くのことを学ばせてもらいました」

――まだまだ業界で活躍する女性が少ないと思いますが、どう感じていますか?

我妻氏「そうですね。気遣いの細かさや、柔らかくお話しできる点など、この業界で生かせる女性ならではの強みはたくさんあると思っています。今後もっともっと女性が活躍してほしいなと思っているので、ぜひ女性をたくさん採用して教育にも力を入れていきたいなと考えています」

我妻氏は今回のロールプレイング大会において、車への愛着や思い入れを丁寧に聞き取り、それを最後の提案へとつなげていた。審査員からは、笑顔を引き出すコミュニケーションや、人柄から伝わる信頼感と安心感に加え、「だからこそ自社で預かりたい」という熱意がストレートに伝わっていた点が高く評価された。

求められるのは「誠実さ」と「営業的熱意」の高度な両立

買取部門の審査員を務めた株式会社リクルートカーセンサーの代表取締役社長、伊藤 慧氏は、今回の競技を振り返り、次のように語った。

カーセンサー 伊藤 慧

カーセンサー 伊藤 慧今回オープンな大会にしたことで、お互いのやり方を見られるようになりました。競合のトップ営業マンの接客を見る機会は普段なかなかありません。そこで得た気づきが各社に広がり、みんなのレベルが上がっていく。そういう場になって、中古車業界全体がもっと安心・安全な場になっていけばいいと思います

今回の大会では、安心感だけでなく、「この車を買ってほしい」「この車を任せてほしい」という熱意も重要な評価ポイントになったという。誠実さと営業としての熱量。その両方を自然にカスタマーへ伝えられることが、これからの中古車販売には求められているのかもしれない。

第2回 U-CAR MASTERS CUP 結果

ロープレコンテスト

【販売部門】

1位 ネクステージ 白濱亘
受賞コメント/前大会優勝のネクステージの代表として、プレッシャーはありましたが、お客さまの立場に立った接客を心がけてきたことが評価され、とても自信になりました

2位 カレント自動車 渡辺陸太
受賞コメント/昨年は緊張のしすぎで昼食に出されたお弁当の味も良く分からないほどでしたが、今回は美味しくいただくことができました(笑)

3位 オートバックス・スクエアカーズ 鳥海卓朗
受賞コメント/出番がラストだったのでとても緊張しましたが、こうした評価をいただき光栄です

ロープレコンテスト

【買取部門】

1位 ユーポス 我妻由加吏
受賞コメント/信じられなくて、涙が出そうです。出場するきっかけをくださった上司が明日誕生日で、「プレゼントは優勝で」と話していたので、その約束をかなえられたことが本当にうれしいです。これからも業界の発展に貢献できるよう、頑張っていきたいと思います。

2位 ネクステージ 佐々木遥
受賞コメント/優勝を狙っていたのでとても悔しいです。次に出場する機会があれば、ぜひ優勝したいです

3位 カーセブン 櫻井雅俊
受賞コメント/緊張した空気の中で商談することがほとんどなく、終始緊張していましたが、こういった機会をいただけてありがたかったです。

文/佐藤旅宇 写真/編集部
佐藤旅宇

ライター

佐藤旅宇

オートバイ専門誌と自転車専門誌の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。様々なジャンルの広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はフォルクスワーゲン クロスUP!と日産 ラルゴの他、バイク(HONDA)とたくさんの自転車。