トヨタパッソセッテは低価格ファミリィカー 【試乗by西川淳】
2009/06/02
安いのはいいことだが、やや難アリの気配も否めない
ダイハツで開発・生産され、トヨタにOEM供給される7シーターのコンパクトカー。ダイハツブランドではブーンルミナスとして販売されている。車名からもわかるように、同名のコンパクトカーをベースにロングホイールベース化し、3列目シートを付加したモデルである。ミニバン世代のニューファミリィカーとして、特に子育て期の女性ユーザーをターゲットに開発された。
エンジンは1500ccのみで、4ATを組み合わせている。3グレードともにFFもしくは生活4駆から選ぶというシンプルなラインナップ。パッソセッテの場合は、X、G、Sというグレード構成で、GおよびSにはやや簡易装備のCパッケージが設定されている。Sはスポーティなエアロパーツ仕様だ。FFモデルで約150万~190万円という求めやすい価格設定になっているのが最大の魅力と言っていい。
全長4.1mという扱いやすいサイズながら、ホイールベースは2.75mと2.5Lのミドルクラスセダン並み。真横から見ると前に比べてリアドアが明らかに大きく、見るからに乗り降りしやすそう。想像どおり、後席の足元空間にはコンパクトカーとは思えない余裕があって、大人5人がゆったりと乗れる。フロントはベンチシートタイプでヒップポイントが高く、乗り込みやすい。上級グレードには大型アームレストも備わっている。2列目、3列目シートのアレンジは、大きなレバーで簡単に行える。3列目のシートは本格的なものではないが、短い距離なら問題なく使えそう。
ダッシュボードにはシンプルデザインのセンターメーター方式を採用した。スイッチ類の数も最小限で、運転席前のアッパー&アンダーボックスや助手席アンダートレイ、格納式ドリンクホルダーに各ドアのポケット&ホルダーなど、収納スペースも多く使いやすい。フロントウインドウは赤外線カットガラスで、そのほかはUVカットガラスもしくはUVカット機能付きプライバシーガラスを採用した。GブックmX対応のHDDナビゲーションシステム、音声ガイダンス機能付きカラーバックガイドモニター、そしてDVD再生機能付き7インチワイドディスプレイのリアエンターテイメントシステムなど、オプションも豊富に用意されている。
FFの「G」に試乗した。正直に言って、走りそのものの評価はそれほど高くない、というか低い。まず、女性ユーザーをメインとしたからだろう、170cmの男性が座るとまともなドライビングポジションが取れず、運転しているうちにだんだん猫背になってすぐに疲れてしまう。乗り心地も、タイヤの硬さが気になるもので、妙に突っ張った感じだ。それでも街中は何とか我慢できるが、80km/hを超える高速域での操縦性は明らかに不安定で心もとない。はっきり言って、遠出には全く不向きな車である。
筆者のような“運転好き”が積極的に乗って評価するような種類の車ではない、と思う一方で、車など便利な道具でしかないという多くのユーザーだってたまの高速走行でも安心して走りたいだろうし、走りのマジメな作り込みも何らかのカタチで乗り手に伝わるはずだとも思う。意図的に、それこそ環境問題を考えて、使用頻度を最小限に抑えるようなクルマを作る、というなら話は別だけれど…。
“安い”は確かに今の時代、世間受けする褒め言葉だ。7人も乗れて、燃費もそこそこ良くて、壊れなくて、サービスも保証もバッチリ。一応、文句ナシだ。割り切って乗ればいい、という意見もわかる。けれども、果たしてそれで日本車の未来があるのかどうか。こんな車からまず、(そう遠くない将来)中国など新興国のメーカーに“真似されてコスト勝負でやられる”気がしてならない。限られた予算の中で苦心のすえ実現した車であろうことは想像に難くない。その努力は認める。認めるけれども、出来上がった車に乗ってみると、この国の車の行く末について、いろいろと考えさせられてしまった。
ライバルの車たち
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