ランドローバー ディフェンダー▲今年の夏から本格的なデリバリーが始まった新型ディフェンダーに試乗する機会を得た。自動車テクノロジーライター・松本英雄がその様子をレポートする

歴代モデルの良い部分を踏襲した新型ディフェンダー

様々な4WDモデルを世に送り出してきたランドローバーの成り立ちを見れば、ディフェンダーというのは、ランドローバー社の基本となるモデルであるということがわかる。

なぜならディフェンダーは、60年以上継続的に生産された歴史的なモデルだからだ。そんな基本たるディフェンダーも、2019年に現行型となる新型がローンチされた。

コロナ禍によってなかなか紹介する機会がなかったが、新型ディフェンダーの5ドアモデルとなる110に試乗することができたので、そのレポートを伝えたい。

そもそも先代のディフェンダーは、強靭なハシゴフレームとスチール、アルミ合金のボディであった。だが新型は、アルミ合金のモノコックボディと独立懸架のサスペンションとなった。

先代は、フレームの重厚感がトラックのような印象で、乗り心地は決してよいものではなかった。新型のディフェンダーは、どのような乗り味なのかとても楽しみである。

実車を前にして、まず目を引くのがそのデザイン。ディフェンダーらしさを踏襲しているところが好印象だ。特にそう思えるのは、視認性の良さを重要視した、フロントまわりとサイドパネルだ。
 

ランドローバー ディフェンダー▲リアビューもディフェンダーらしい力強いデザインだ

シートに腰かけ、サイドミラーを見て見ると、2mに迫る全幅と5m近い全長の大きなボディにも関わらず、小さく思える感覚に陥るほど車両感覚がつかみやすい。これは、今まで蓄積したノウハウが駆使されている証拠だ。

インテリアは、随所にリアルマテリアルを採用し、質の良さも演出しながらシンプルで、飽きづらいすぐれたデザインだ。

触れる部分の質感や反射を抑えたソフトパッドの採用は、近代の他モデルから受け継がれたアイテムといえよう。新しさの中に伝統的な要素が融合しているといえる。
 

ランドローバー ディフェンダー▲シンプルながら力強いデザインのインテリア。センターコンソールも幅広く安心感を与える

高い静粛性に恐ろしいほど良い乗り心地

では試乗に移ろう。エンジンを始動すると、上級モデル並みに静粛性が高いことがわかる。

バイワイヤー式のセレクトレバーをDレンジに入れて走り出す。搭載される4気筒ターボエンジンは、専用のチューニングが施されている。今まで試乗した同様のエンジンよりも力強さを感じる。馬力より低速トルクを重視しているように感じた。

一般道から高速道路を走ると、キャリアやサイドキャリアも装備しているので、風切音が大きいと思いきや、制限速度では本当に気にならない。素晴らしい遮音性である。
 

ランドローバー ディフェンダー▲力強い見た目とは裏腹に静粛性が非常に高い
ランドローバー ディフェンダー▲搭載されるエンジンは300psの出力と400N・mのトルクを発生する
ランドローバー ディフェンダー▲リアウインドウサイドに取り付けられたボックス

横風によるスタビリティのネガティブな部分もあるのでは思っていたが、これも驚くほど真直性が高い。正直言って乗り心地が異常なほどよい。

これだけ乗り心地がよいと、一般的にカーブでは不安な印象を感じるが、ディフェンダーはまったく不安を感じさせない。路面との追従性が高いサスペンションである。さすが独立懸架式をオフロード車に長く実用しているだけのことはある。

ユーザーを満足させる質感の良さに加え、シンプルながら高級感と重厚感もあるという相反する感覚をもつデザインと、クオリティコントロールはオンリーワンなのである。

この仕様で600万円を切るというのだから、非常にお値打ちのモデルであることに疑いの余地はない。
 

文/松本英雄、写真/尾形和美
松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。