街乗りでこそ力を発揮するコンパクトさと「nimble(俊敏さ)」【東京スマート軽ライフ】
2016/06/13
自動車ライター、塩見智さんが軽自動車に約1ヵ月間乗り、東京での軽ライフをリポートする「東京スマート軽ライフ」。高級車が溢れる東京での軽ライフを赤裸々につづっていく。今回はアルトワークス編の第2回。

コンパクトさは使いやすさ
軽自動車を日常の足として使い始めて10日ほどたった。相変わらず使いやすい。コンパクトさというのはひとつの立派な性能なんだとあらためて気づかされた。例えば切り返しをする機会が格段に減った。交差点ではくるりと余裕をもって一発でUターンできるし、狭い駐車場での出入庫もまったく気を使わない。縦列駐車も一発で決められる。
最小回転半径4.6mは立派だ。この値が5mを切る車は小回りの利く車といえる。こういう”小さいことによる使いやすさ”は何度も体験することで蓄積され、愛着につながる。スーパーの駐車場で、永遠に続くんじゃないかと思わせる切り返しをしながら、いつまでも駐車できないでいる大きな車のユーザーを見ると、見栄というのは罪深いものだなと考えこんでしまう。
見栄の街、東京では軽はネガティブ要素なのか
大前提として、車を借りて取材をしながら大変失礼な話なのだが、この企画を始めるに際して、高級車や最新の車が多い東京で軽自動車を使っていると、なんとなく引け目を感じるんじゃないかと予想していた。そう感じたらそう感じたと正直に書けばよいと考えていたのだが、今の段階ではネガティブな思いをしたことはない。都心のガソリンスタンドでも、ホテルの駐車場でもていねいに扱われたし、信号待ちで高級車と並んでもああそうですかってなもの。
ただ一点、高速道路でも一般道でも割り込みされやすいのは間違いない。「順番としては僕の後ろでもよかったよね」「ミュルザンヌだったら絶対入ってこなかったよね」などと思わざるを得ない状況が、時々ある。まだたかだか10日程度しかたっていないので、もっといろんなところへ行って自分の感情をチェックする必要がある。ゴルフ場はひとつの試練になるんじゃないかと予想している。

軽量こそが「nimble(俊敏さ)」のカギになる
それにしてもアルトワークスは速く、軽快で、走らせて楽しい。海外の自動車雑誌を読んでいると、スポーツカーのページに「俊敏」とか「すばやい」を意味する英語の「nimble」というワードがしばしば出てくる。アルトワークスがまさにそれ。狭いうえに混雑した東京砂漠を駆け巡るのに最適な1台だ。
軽快な身のこなしの一番の理由は車両重量の軽さにほかならない。わずか670kgしかないので、660cc直3ターボエンジン(最高出力64ps/6000rpm、最大トルク10.2kg・m/3000rpm)が発する限られたパワーでも十分以上なのだ。

もちろんアルトワークスも「軽自動車の最高出力は64psまで」という国内の軽自動車メーカーが定めた自主規制から逃れられるわけではなく、他の多くのターボ付き軽自動車と同じ64psにとどまる。となると、軽自動車の速さを決定的に決めるのは重量ということになるのだ。64psを発する現行の軽自動車の中でアルトワークスは最も軽量。イコール速いのだ。
ここでいう速さとは単にぶっ飛ばせるという意味ではなく、それこそnimbleだってこと。交差点で右左折し終えた直後に速度復帰するときや、高速道路で合流するとき、それからワインディングロードでいつもよりも少し活発にコーナーをクリアするときなどに、軽さが64psをより価値あるものにしてくれる。そしてもちろん軽さは燃費にも貢献する。

乗り比べたいのは……ずばり、ホンダ S660
現行の軽自動車の中で最も本格的なスポーツカーといえば、ミッドシップ2シーターオープンのホンダ S660だろう。だが、S660の車両重量は830kgとアルトワークスよりも160kg重い。当然、最高出力は同じ64psだ。最大トルクは10.6kg・mとアルトワークスよりわずかに大きい。つまり、速さの指標のひとつであるパワーウェイトレシオ(1psが車重何kgを担っているか)はアルトワークスの勝ち。ただし、速さを決めるのは駆動方式によるトラクション能力や重心の低さなど、様々な要素が絡むので、どちらがよりスポーティかは決められない。この企画でS660も取り扱って、アルトワークスとの比較を展開したいものだ。

【筆者プロフィール】
1972年、岡山県生まれ。自動車雑誌編集部を経て、フリーランスの自動車ライターへ。軽自動車好き。SUV好き。「カーセンサーnet」をはじめ、「GQ Japan」「GOETHE」「webCG」「carview!」「ゴルフダイジェストオンライン」などにて執筆中。
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