「大排気量・自然吸気」という今や禁じられた(?)贅沢はC63 AMG エディション507で堪能する!
カテゴリー: クルマ
タグ: AMG / Cクラスクーペ / EDGEが効いている / EDGE SELECTION
2016/11/02
「素晴らしいエンジン」と「贅沢なエンジン」はちょっと違う
近頃は車のエンジンも「ダウンサイジング」がブームで、実用車であれば1.2Lぐらいの小排気量+過給器という仕様が中心となっており、いわゆる高級車でも4気筒1.6L+過給器なんてのが結構多い。さらにはフェラーリやポルシェでさえ、以前よりはエンジン排気量をいくぶん小さくしているのが今という時代だ。
そういった世の中のトレンドに文句を言うつもりはない。しかし、正直申し上げて「物足りねえなぁ……」と思ってしまう局面がないわけではない。
例えばメルセデス AMGの某モデルを試乗したときのことだ。最高出力381psを発生する700万円超のAMGがイマイチなはずもなく、大変感銘を受けたわけだが、実はその381psは、排気量わずか2Lの直4DOHCにターボチャージャーをカマすことで実現されている。
で、結論としては数値どおりの超絶パワーをドライバーは堪能できるわけだが、その感触は、やはりというかしょせんというか、どうしたって2Lのモノなのだ。それが悪いわけでは決してないが、どうしても「小さなものが頑張って稼働している」という感覚はつきまとう。例えて言うなら「狭めの土地に高~いビルを建てた感じ」というか。つまり「素晴らしい」が、「贅沢」ではない……ということだ。
「贅沢」とは「無駄」ということでもあり、車のエンジンで言うならそれは「自然吸気の大排気量エンジン」であろうか。例えば排気量5L超の自然吸気エンジンだ。ひと昔前のそういったエンジンは、最高出力330psぐらいのものが多かったと思う。現代の技術をもってすれば、2L程度の排気量とターボチャージャーで軽く凌駕できてしまう程度の数値だ。しかし数値には表れない「贅沢感」は、実に素晴らしかったのである。
無駄といえば無駄なわけだが、余りある排気量の内燃機関がユルユルと余裕をもって、しかし強烈なパワー&トルクを伴って働く感触はまさに「贅沢の極み」であり、それにつきまとう高額な自動車税は、いわばノブレス・オブリージュだった。現代のダウンサイジングターボが狭小ペンシルビルディングだとしたら、こちらは「故・田中角栄氏の目白の大邸宅」といった感じだろうか。無駄に広大で税金も高いわけだが、それでも「あぁ素晴らしい……」と感嘆せざるを得ないわけだ。それは例えば5Lの自然吸気V8を搭載した往年のメルセデス・ベンツ 500Eや、6.7L OHVのロールスロイス シルバースパーあたりで大いに堪能できた、古き良き味わいである。
最近の大排気量・自然吸気といえば極めつけは「エディション507」
で、もちろんすべての人ではなく、あくまでも「無駄な税金とガソリン代を払ってでも“贅沢な車”に乗りたい」という人だけに向けた話だが、そういった人にはぜひ「男は黙って5L超の自然吸気!」といった感じの選択も検討していただきたいと願う不肖筆者である。
が、今さら往年の500Eやシルバースパーというのもちょっとマニアックすぎる選択ゆえ、注目すべきは「旧型C63 AMG」となるだろうか。
ご承知のとおり現行世代のメルセデス AMG Cクラスは排気量4L+ツインターボにダウンサイジングされており、それはそれで素晴らしい大排気量エンジンなわけだが、旧型のそれは(排気量的には)さらに強烈な6.2L、泣く子も黙る「6L超の自然吸気」である。自動車税も強烈だが、大排気量自然吸気エンジンでしか感じることのできない「贅沢感」もまた、相当強烈だ。
「でもなあ、今さら型遅れのAMGを買うのもなあ……」とおっしゃる富裕な自動車愛好家各位もいらっしゃるだろう。筆者自身は富裕層ではないが、そのお気持ちはなんとなくわかるつもりだ。そこでご提案したいのが、「普通の旧型C63 AMGじゃなくて、C63のエディション507はどうでしょう?」ということだ。
究極の無駄=贅沢という比類なき価値を今
旧型C63 AMGのセダン/クーペ/ステーションワゴンにそれぞれ用意された「エディション507」とは、モデル末期の2013年に追加されたスペシャルモデルで、「旧型C63の最高到達点」とでも評すべき存在。6.2Lの自然吸気V8には「SLS AMG」の開発で生まれた鍛造ピストンやコンロッド、軽量クランクシャフトなどが採用され、最高出力はベースモデルを50ps上回る507psに。当然、この数値が車名の由来だ。ちなみに0-100km/h加速はセダンとクーペが4.2秒で、ステーションワゴンが4.3秒という韋駄天ぶり。
その他、当然ブレーキも専用設計のAMG強化ブレーキシステムで、鍛造の19インチAMGクロススポークアルミホイールやボンネットに増設されたエアアウトレット、挙げていくとキリがないほどの専用内外装部品などを備えた、スペシャルすぎるほどスペシャルなC63 AMGだったのだ。そしてそれらの帰結として、当然ながら価格もスペシャルであり、エディション507の新車時価格はセダン1210万円、クーペ1220万円、ステーションワゴンが1230万円というなかなかのものであった。
それが今、けっこうお安いのだ。
もちろんお安いといっても200万や300万円で買える車ではなく、「下は600万円台半ば、上は800万円台前半で、中心は700万円台半ば」というのが現在のマーケットだが、このいまだ圧倒的なパフォーマンスと存在感、希少価値、そして「今やほぼ絶滅してしまった6L超の自然吸気エンジン」という究極の無駄=贅沢を味わえるという意味で、旧型C63 AMG エディション507は今、現行世代のメルセデスAMG各車に勝るとも劣らぬ選択の一つかと思うだが、果たしてどうだろうか?
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