マイナーチェンジしたM・ベンツSLクラス 【試乗by西川淳】
2008/09/24
狙い目はエントリーモデルのSL350?!
“キング・オブ・オープンカー”M・ベンツSLクラスの今回のマイナーチェンジにおいて、最も注目すべきグレードは何かと問われれば、SL63AMGのパフォーマンスが脳裏によぎりつつも、私はこのSL350であると答えるだろう。
確かにパフォーマンスに加えてステータスシンボルとしてのSLクラスも考えれば、SL550を含めたV8モデルこそ真骨頂であるかもしれない(12気筒モデルは雲上だ)。先々代SLクラス以来、V8モデルが本流であり続けたし、マイナーチェンジ前の現行型においてはSL55AMGというグレードが高級スポーツカーの代名詞的に一世を風靡した。
その一方で、かの300SLガルウイング以来続く6気筒モデル(直6からV6へと変わったものの)もまた、特にクロウト筋から高く評価されていた。鼻先が軽く、スポーツカーらしい振る舞いを満喫することができたし、バランスも良かったからだ。ただし弱点もあった。それは、力不足。ここ一発の加速が物足りなかった。マイナーチェンジなったSL350ではそこに手が入り、ついに6気筒で300psオーバーの力を得た。専用チューニングにより、従来よりもなんと+44psもの最大パワーを獲得している。これにブリッピング機能付き7速ATが組み合わされた。
フロントマスクを中心にした大がかりなエクステリアの改変により、前からの眺めや雰囲気は、マイナーチェンジ前とかなり異なっている。写真では少々伝わりづらいが、ワイド感が相当に強調され、押し出しも強い。フロントグリルが20mmもワイドになったからだ。これに比べれば、従来の顔立ちが可愛らしく思えるほど。リアからの眺めは以前とさほど変わらないが、ディフューザーやエンドパイプ、コンビネーションライトが異なっている。1本の太いルーバーが走るグリル、サイドアウトレット、エンジンフードのパワーバルジなどは伝説の300SLガルウイングから拝借したモチーフ。
インテリア全体に関しては見慣れたものだ。ただ細かな部分で最新モードに入ってきた。ナビやオーディオ、電話系の操作機能を統合したコマンドシステムが採用されたほか、SLKクラスで話題となったエアスカーフ機能や、シフトノブにエンジンスタートボタンを配したキーレスゴーシステムなど、随所に目新しい装備が見える。メーターパネルのデザインも新しい。また、一般道や高速道路といった走行状況別にヘッドライトの照射をコントロールする日本初のインテリジェントライトシステムを標準で装備。さらに緊急時のブレーキ操作でブレーキライトが点滅するアダプティブブレーキライトもM・ベンツとして初導入された。
試乗会当日はSL63AMGと入れ替えに乗ることになったので、いくらパワーアップしたとはいえ、SL350の性能が見劣りしてしまうのではという危惧があったが、それは杞憂だった。確かに、絶対パワーでは圧倒的な差がある。けれどもSL350には、“これぞオープンスポーツカー”というべき軽快な身のこなしと、胸をすくリニアで心地よい加速フィール、そして心とろけるようなエグゾーストノートがあった。
排気音のチューニングにこだわるのは昨今の高級スポーツカーの常識だが、M・ベンツもかなり上手になってきた。なかでもこのSL350のチューニングは絶品。エンジンフィールとも見事にユニゾンしており、オープンにして直接空気の震えを感じなきゃ損、という気にさせる。音や振動が心地よくドライバーに伝わるというのは、オープンスポーツカーにとって大事なこと。これがあって初めて、風そのものも気持ちよく感じることができる。こうなれば、316psのパワー感が効いてくる。力と音と振動が、乗り手のお尻から背骨を通り、脳天から空気中へと発散されるようだ。
惜しむらくは、SLKクラスには採用されているダイレクトステアの導入が見送られたこと。近い将来の設定に期待したい。
ライバルのクルマたち
あわせて読みたい
- フェラーリのV6を搭載した最強コラボGT! ’71 フィアット ディーノ 2400 クーペ【名車への道】
- 【海外試乗】新型 ベントレー コンチネンタルGT/GTC スピード|スポーツカーとして楽しめる! ライドフィールも極上なグランドツアラー
- ホンダ アコード(11代目)をマンガで解説! 「オトナなアッパーミドルセダン」はどんな車?【人気車ゼミ】
- 【海外試乗】新型 フェラーリ 12チリンドリ|スーパースポーツの概念を覆すほどしなやかで快適! エレガントなスタイルのベルリネッタ
- 【名車への道】’90 マツダ ユーノス ロードスター
- 【試乗】新型 メルセデス・ベンツ CLE カブリオレ|素直で優雅な走りを楽しめる貴重なオープンカー!
- R32 スカイラインGT-Rの最安中古車、489万円ならギリ手が届きそうだけど……ぶっちゃけどうなの? チェックポイントを聞きながら、実際に見てきた!
- レクサス GXの発売延期に絶望した人に贈る「代わり」のオススメモデル5選
- 【試乗】新型 メルセデスAMG GT クーペ|安心して身を任せられる“オールマイティ”なグランドツアラー!
- 【試乗】新型アストンマーティン DB12ヴォランテ|ハイパフォーマンスモデルもゆったり走るのが気持ちいいと思わせる英国流ラグジュアリーオープン!