新型コペンの「お着替え」についてチーフエンジニアの藤下修氏に聞いてみた

▲新しい「コペン」。ドアを除く外板部分は樹脂製。ボルトで取り付けられていて、購入後に交換することが可能だ

新しい価値と車の性能向上を狙った産物!?

編集部A（以下、A）　ぴえいるさん、オッサンくさいですね
ぴえいる（以下、ぴ）　……匂うか？（くんくん）
A　加齢臭がわかるほど近づきたくはないです。そうじゃなくて、見た目ですよ。よれよれタンクトップ、ステテコか!?　と突っ込みたくなるほどの、その短パン。もう少し、若々しい服を買ったらどうですか？
ぴ　Aくん、その発言は世の中のオジさんを敵に回しただけでなく、中古車を買おうとしている人々にまでケンカを売ってしまうことになるぞ
A　はい？　何言ってんですか？　ボクはただぴえいるさんのセンスに疑……
ぴ　せっかく現行型の中古車を買ったのに、そのあとマイナーチェンジで車の見た目が変わってしまうと、ちょっぴりガッカリしないか？　今風の、新車と同じにはならないのだから
A　あ～、ありますよ。着替えられる車
ぴ　何だとAくん!?　そいつは事件だ！

……という小芝居を経て、2人はダイハツ コペンの開発を担当したチーフエンジニアの藤下修さんに会いに行ったのだった。

ぴ　車が着替えられるというアイデアが、なぜ生まれたのですか？　ひそかに中古車が出たら買おうと今から考えているような私にとっては夢のような話です。何しろ、キズやヘコミとかを今までみたいに気にしなくていいですしね
藤下さん　そもそも、どうやったら若い人にもっと車に興味を持ってもらえるかという危機感がありました。それには新しい価値観を出さないといけないと考えていました。一方で、胸を張ってライトウエイトスポーツカーと言える車を作るという強い思いを持っていました。そのために土台である車の骨格は、しっかりしたものを作ろうとしたのです
ぴ　つまり、今までにない価値の創造と、車としての性能の向上の2つを追っていたと
藤下さん　そうした中で、デザイン案が最終的に2つに絞られました
ぴ　普通は、ここでどちらか一方のデザインを選ぶわけですが……
藤下さん　我々としてはどちらでも、あるいは別の案でも、ライトウェイトスポーツカーと胸を張ってユーザーに届けられると思っていました。それほどこの骨格には自信があったのです。そうしたら、経営陣の方々が、だったら2つとも出そう。何もためらうことはないじゃないか！って
ぴ　だからまずは「ローブ」というデザインでデビューし、今秋には「Ｘモデル」が、さらに来年には丸目ライトのデザインが登場予定という「着せ替えスケジュール」になったんですね

▲上が今秋登場予定のXモデル（クロスモデル）、下が来年登場予定の丸目モデル。現在のコペン（ローブ）を購入しても、Xモデルや丸目モデルへ着せ替えすることが可能だ

藤下さん　骨格がしっかりしているから、こうした着せ替えが可能なんです
ぴ　ライトウエイトスポーツカーとしての、またオープンカーとしての楽しさに加えて、さらにそれを様々なデザインで楽しめるというわけですね

誰でもコペンのデザイナーになることができる!?

藤下さん　例えばスマートフォンのカバーって、みなさん自分の好みのものを付けて着飾りますよね？　若い人にはそんな風に車を楽しめる、新しい価値観をアピールできるのではないかと思います
ぴ　スマホ同様、いわゆるサードパーティー（第三者の企業）の参入も見越しているのですか？
藤下さん　それもありますが、そもそも我々はサードパーティーの方やデザイナー、クリエイター、さらに学生さんなどにも「一緒にコペンを作りましょう！」と投げかけています。我々と契約さえ結んでいただければ必要なデータは開示しますし、どなたでも応募していただけるようになっています
ぴ　では、そこからも新しいデザインが生まれて、販売されるんですね
藤下さん　基準を設けて販売店保証を付けることも考えています
ぴ　じゃあ、自分でデザインしたコペンに乗れる人が何人も出てくるってことですか！　私は絵心がないんで1人じゃムリだけど、知り合いのデザイナーにまずは相談してみます。貴重なお話、ありがとうございました！

▲従来の構造にこだわらず、スポーツカーにふさわしい剛性を追求した結果、外板を着替えられるという新しい価値の創造にもつながった

ちなみに、着せ替え費用については30万～50万円程度で検討中だという。これは軽自動車のエアロパーツ3点セット（フロントバンパー／サイドステップ／リアバンパー）の価格と全塗装の価格の中間という考えから。もちろん一部だけを変更するなどアイデア次第でもっと安く抑えられるかもしれないとのこと。

A　それにしても、中古車になった際のキズやヘコミを気にしなくて良くなるどころか、中古車を買って、自分好みのコペンに変えられちゃうなんて、すごいですね
ぴ　しかも乗ればライトウエイトスポーツカーの楽しさがある。オープンカーという世界も味わえる。今の若い人に、そんな車の楽しさを知ってほしいとも言っていたね
A　それを可能にしたのはしっかりした骨格だと。やっぱり中身って大事なんですねぇ～
ぴ　……Aくん、それは私にケンカを売っているのかな？　いくら若者受けする服を着ても、中身がオジさんじゃ意味がないとか、そういうことか!?
A　……被害妄想が激しくなるんですか、オッサンって

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