【試乗】フェラーリ 812スーパーファスト|フェラーリ史上最強のFRロードカーの走りは圧巻!NA最後のモデルとなるか?
カテゴリー: フェラーリの試乗レポート
タグ: フェラーリ / クーペ / FR / 812スーパーファスト / 松本英雄
2019/12/25
史上最速かつ最もパワフルなフェラーリ
フェラーリといえば、ミッドシップレイアウトのスーパーカーを思い出される方も多いと思うが、エレガントで超高性能となればロングノーズショートデッキのFRフェラーリである。
今回試乗することになった812スーパーファストはスポーツカーでもあるが、2シーターのグランツーリスモであろう。
0→100㎞/h加速が2.9秒の超高性能の俊足ぶりをもって、500㎞のロングドライブもモノともしない性能だ。
短距離レポートにはなるが、今回は箱根ターンパイクのワインディングを中心に、800馬力を発生するこのモデルのフィーリングをお伝えしたい。
スタイリングから官能的
NAの12気筒がフェラーリの代名詞とも言えると思えるが、スーパーファストに搭載されるV型12気筒6.5リッターから発生する800馬力が、最後のNAだけでの高出力モデルかもしれない。
次のフェラーリのモデルは、EVになる可能性が高い……。
ある意味、F1をずっと続けてきたフェラーリのエンジンに対するノウハウがこの1台に積み込まれていると言ってもいいだろう。
そう考えるとより一層、味わいたくなる。
フェラーリは乗ったフィーリングも独特で官能的なモデルだが、スタイリングを見ても美しさやスピードを感じる。
特徴的なドアノブを引き乗り込むと、身体がシートにぴたりと吸い付く。
耐久性もさることながら、性能を優先した高品質のレザーは非常に上品な風合いだ。
これほど大きな排気量にも関わらず、レッドゾーンは9000回転である。タコメーターから見ると実際には8000回転ぐらいが実用でのマキシムであろう。
興奮を抑えつつ、スイッチに手を伸ばしボタンを押す。
改めて感じた究極のグランドツーリング
リダクション化されたスターターモーターはすこぶる速く回転して“キューン! フォォォォッ”雄叫びを発する。
FRのチューニングされた12気筒でないとこの音色は出ない。
軽くブリッピングをすると、とても軽やかだ。
すべて均一化された燃焼室の12気筒は本当に素晴らしく、さすがだとしか言いようがない。
では発進だ。スロットルは重さもあるが、微調整が利く電子スロットルだ。
ゆったりと発進させて回転を上げると3000回転ぐらいから、他の多気筒で聴かない甲高いハーモニックな予兆を感じ取れる。
ステアリングは軽く、路面とは高速になれば安定するような雰囲気だ。
ツインクラッチ方式の2ペダルのトランスミッションはホールドさせて、パフォーマンスの潜在能力をドライバーに教えるかのようだ。
少し深く踏んでみると一気にパワーは高まり、トラクションしきれない領域になるとテールスライドを始めようとする。
軽く踏んだ状態でこの姿勢だ。
このモデルがいかにフラッグシップのグランツーツーリズモであっても、身の程知らずのドライバーが最新の車のように扱っては痛手を食らってしまうだろう。
それほどドライバーを選ぶ車である。
また、それがひとつのフェラーリを扱う資格であるとも感じ取れる。
慎重にスロットルを扱いながらコーナーをさばいてみる。ステアリングを最小限に操作すると、ノーズがこれほどのエンジンを搭載しているにも関わらずとても軽快だ。
ロングノーズを生かしたフロントミッドシップは本物だ。
そして何よりも先代のF12ベルリネッタに比べ、高速運転していても安定感と心地よさがたまらない。
基本プラットフォームは一緒だと思うが、デザインだけでなく細かなセッティングの見直しをしているに違いない。
エレガントさが増した走りなのだ。
一握りの恵まれた人のため、さらなる付加価値を見える部分と見えない部分で繰り広げるフェラーリの誇りが垣間見える。
分かる人には分かる微細なこだわりでティフォシをとりこにさせるのが、マラネロのマジックなのである。
自動車テクノロジーライター
松本英雄
自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。車に乗り込むと即座に車両のすべてを察知。その鋭い視点から、試乗会ではメーカー陣に多く意見を求められている。数々のメディアに寄稿する他、工業高校の自動車科で教鞭を執る。『クルマは50万円以下で買いなさい』など著書も多数。趣味は乗馬。
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