F1世界選手▲2024年12月14日(土)、15日(日)の2日間にわたって東京・青山のHondaウエルカムプラザ青山で「Honda Racing 2024 Season Finale」が開催された。国内外のレースに参戦している二輪、四輪のレーシングマシンが展示され、レジェンド&現役のライダーとドライバーが参加。そこにはF1世界選手権に参戦している角田裕毅選手の姿があった

レッドブルのフェルスタッペンが4連覇を達成! しかしコンストラクターズタイトルは獲得できず

2024年2月29日にバーレーンで始まった2024年シーズンのF1世界選手権。史上最多の24戦が行われ、12月8日、最終戦アブダビの決勝レースで幕を閉じた。

ドライバーズ選手権は、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが4連覇を達成。2位には大きく躍進したマクラーレンのランド・ノリス、3位にフェラーリのチャールズ・ルクレール、4位はマクラーレンのオスカー・ピアストリ、5位にフェラーリのカルロス・サインツと続く。

一方のコンストラクターズ選手権では、セルジオ・ペレスの不振がたたり、2022年シーズンのスペインGPから2024年シーズンのイタリアGPまで、55戦連続でコンストラクターズ選手権をリードしてきたレッドブルがついに陥落。最終的にマクラーレンが26年振りにタイトルを獲得し、2位にはフェラーリがつけた。その差はわずか14ポイント。レッドブルは3位となった。

各チームはなぜコンストラクターズ選手権に躍起になるのか。それは、F1においてはコンストラクターズ選手権の順位に応じてフォーミュラワン・マネジメント(FOM)から分配金が支払われる仕組みとなっているためだ。

トップのチームに支払われる分配金は推定200億円以上、順位がひとつ変わると数十億円もの差があるといわれる。
 

F1世界選手▲第24戦アブダビGPの決勝レースでレッドブルのマックス・フェルスタッペンが6位でフィニッシュ。写真はドライバーズ選手権4連覇を達成したラスベガスGPでのワンシーン

日本人ドライバーの角田裕毅選手の活躍は?

レッドブルのセカンドチームであるRB(レーシングブルズ)で4シーズン目を迎えた日本人ドライバーの角田裕毅選手は、ドライバーズ選手権12位、コンストラクターとしては8位でシーズンを終えた。

今シーズンの角田選手の活躍は大いに注目された。21戦のサンパウロGPでは自己ベストの予選3番手を獲得。トップチームと下位チームとではマシンの性能差があるF1においては、最大のライバルはチームメイトであるといわれる。

角田選手はシーズン前半のチームメイトだったダニエル・リカルド、そして途中交代で最終6戦を走ったリアム・ローソンの成績を上回り、しっかりとその速さを見せた。
 

F1世界選手▲角田選手はスタートトラブルで大きく出遅れてしまい、アブダビGPは不本意な結果だったが、ドライバーズランキングは12位でチームメイトよりも好成績で2024年シーズンを終了した

シーズン終了後、成績不振に陥ったレッドブルのセルジオ・ペレスは更迭。代わりにレッドブルに昇格するのが、RBの角田選手とローソン選手のいずれかだった。最終戦終了後の12月10日にアブダビで、角田選手に初めてレッドブルのマシンをドライブする機会が与えられた。来シーズン用のタイヤの性能テストが主な目的であり、それは昇格に向けた最終オーディションとも捉えられていた。
 

F1世界選手▲アブダビGP後の12月10日、角田選手はヤス・マリーナ・サーキットでのレッドブルのテストに参加
F1世界選手▲テストで角田選手がドライブしたカーナンバー22のレッドブルRB20

レッドブルだろうと、RBだろうとやることは同じ

そのわずか数日後、角田選手の姿はホンダの青山本社にあった。12月14日(土)、15日(日)に「Honda Racing 2024 Season Finale」というファンイベントが開催され、そのトークショーなどに登壇するためだ。その際に報道陣向けに角田選手の囲み取材の場が設けられたので、テストを終えてのレッドブルとRBのマシンの違いについて尋ねてみた。

「事細かくは言えないですけど、もちろん1周をアタックする感覚も違いますが、特にロングランの違いが印象的でした。周回を重ねたときに、タイヤの持ち方が全然違うというのはありますね。特に高速コーナーでスピードが速ければ速いほど、スライドするとタイヤが減ってしまう。もちろん滑っていなくても、ハンドルを修正しなくてもタイヤは確実に減っていくわけで、それが積み重なっていくわけじゃないですか。彼ら(レッドブル)のマシンは、特に高速コーナーが速いわけですけど、全然(路面と)接着していて、滑りにくくて、温度も安定していて結局それがタイムの安定につながっていると感じました」

近年のレッドブルのマシンは、フェルスタッペン仕様になっており、チームメイトにとっては乗りやすいマシンではないといわれてきた。そのあたりの感覚はどうだったのか。

「初めて違うマシンに乗るわけで、どういった感覚になるのか、興味と不安もありながら、実際に乗ってみると全然すんなり乗れるなっていう印象でした。それはもちろん同じホンダエンジンを使っているという部分もありますし、どれだけ操作に対して比例して反応がついてくるかっていうドライバビリティの違いというのは、すごくダイレクトに感じるところです。最初の1周目から変な挙動や、想定以上の動きはなくて特に違和感なく走れましたし、早いタイミングでマシンの限界を感じることができました」
 

F1世界選手▲トークショー『Yuki Unplugged ~角田裕毅のプライベートに迫る~』に登壇した角田選手。オフの過ごし方やレース以外の時間の使い方などを語った
F1世界選手▲「Honda Racing 2024 Season Finale」にはF1マシンの他に、四輪レーシングマシンのAcura ARX-06なども展示された

この日は、来年のシートに関する質問はNGということだったが、角田選手がトークショーの中で、「レッドブルに乗ろうとRBに乗ろうとやることは同じ」と、真摯に話している姿が印象的だった。以前、参戦1年目の角田選手にインタビューする機会があったが、当時に比べて振る舞いや受け答えも明らかに洗練されていた。レッドブルのステアリングを握るにふさわしい成長を遂げていると感じた。

2024年12月19日、多くのファンの期待に反し、レッドブルはリアム・ローソンを昇格させるという正式発表を行った。しかし、角田選手の挑戦はまだまだこれから。日本人ドライバーの初勝利、そしてドライバーズチャンピオンだって決して夢物語ではない。

2025年のF1シーズンは3月14日、オーストラリアで開幕。4月4日からは第3戦、鈴鹿日本GPが開催される予定だ。
 

文/藤野太一 写真/藤野太一、ホンダ、Getty Images / Red Bull Content Pool